乳癌全摘出術後の痛みとは?
ここでは、「乳癌全摘出術後の痛み」
についてお話します。
乳癌の診療において手術療法は、
現在も欠かすことの
できない重要な治療です。
現在は乳房温存術も
積極的に行われていますが、
病気の進行具合や術後の整容、
再発のリスクを考えると
全摘術も重要な術式です。
そこで今回は、乳房全摘術と
術後の症状についてお話をします。
乳房全摘出術とは
全摘出術にもいくつかの方法がありますが、
生存率についての差はないと言われています。
1.ハルステッド術
大胸筋や小胸筋を含めて切除する方法で、
現在はほとんど行われていません。
2.胸筋温存乳房全摘術
胸筋以外の、乳腺を取り囲む
組織を全て切除します。
最も一般的な方法です。
3.単純乳房切除術
胸筋と、脇のリンパ節を残すことが
できるためリンパ浮腫が起きません。
しかし、非浸潤癌のみに適用されます。
4.皮下乳腺全摘術、皮膚温存乳房切除術
小さく切開した所から乳腺だけを切除し、
乳頭・乳輪、皮膚は残ります。
機能障害はなく同時再建も容易ですが、
局所再発率は若干高くなると言われています。
全摘出術の適応
局所再発のリスクが高い場合、
温存術が適応外の場合、
全摘出術が勧められます。
1.マンモグラフィーで広範囲な
悪性石灰化がみられる。
2.しこりが多発している、
乳房の大きさに比べてしこりが大きい。
3.妊娠中や膠原病である、
過去に乳房に放射線治療を
行ったことがある
などで放射線治療が行えない。
術後の主要な後遺症
全摘術の主な後遺症には、
次のようなものがあります。
・痛み
創部そのものの痛みと、
切開による神経の痛みとがあります。
創部そのものの痛みは、
退院する頃には
痛みどめを飲まなくても
よい程度になることが多いです。
しかし、人によってはピリピリ
といった感覚が出現します。
乳房周辺は多くの神経が通っており、
そこにメスが入ることで
神経痛が発生するためです。
創部周辺を触っても感覚が鈍い
という感覚異常が
出ることもよくあります。
痛みに比べ、感覚異常は
数か月以上続きます。
でお話した「痛み」は、
癌が骨に転移したことによる
痛みですので、特に体動時に
ズキッと痛むと感じることが多いです。
手術による痛みは時間の
経過で軽くなっていきますが、
転移による痛みは放置して
自然によくなることは少ないです。
・運動障害
術後しばらくは、手術した側の
腕があがりにくくなります。
入院先の看護師から術後の
リハビリテーション指導がありますので、
少しずつ行って、
動かせる範囲を広げていきます。
・リンパ節郭清による腕のむくみ
リンパ節を取ると、
リンパ液の流れが悪くなり
腕がむくみやすくなります。
これについても、看護師から
観察ポイントやマッサージ
についての指導があります。
温存術に比べ、全摘出術後の方が、
痛みやしびれの感覚が続くでしょう。
しかしその症状は少しずつ
良くなっていきます。
痛みなどのつらい症状が
続くようであれば、
医師や看護師に相談してください。